Japanische Klassiker mit Furigana
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やぎゅうつきかげしょう
柳生月影抄 名作短編集(二)
吉川 英治
Lesen Sie 柳生月影抄 名作短編集(二) (やぎゅうつきかげしょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 173.309 Zeichen · 352 Bildschirme
五
嫌かね、どうだね。……ええ、おふくろ。……おやっ?」
わしは仰天した。
肩を揺すぶると、母の首は、わしの肩から力なくぶら下がった。眼をふさいで――唇から血の糸を引いて。
老母は流れ弾にあたって、いつの間にか死んでいたのだった。
五
わしは幾日も冷たい空骸を背負って歩いた。夜は抱いて山に寝た。
いくら肌寒い山中でも、三日も経つと死臭を放ちはじめたが、それでも母の死骸を捨てきれなかった。
大日岳へかかった。
屍体の肌は、もう葡萄色になっていた。わしは、わしの愛執のために、老母のそうした醜い顔をいつまでもこの世に曝しておくのを罪深く思った。
清浄な檜林を見つけた。わしは老母の空骸を千年苔の下に埋めた。鍬は近くの小挽小屋から借りて来たものだった。手から鍬を捨てるとわしは両手をつかえ、親というものへ、生れて初めて真心と形との一つになって、ほんとの頭を下げ切った。
「…………」
鳥の音が澄んで透る。とめどなく涙があふれ出て止まらない。三ツ子のようにわしは嗚咽していた。
――すると誰か後ろで咎めた者があった。わしはあわてて泣き顔のやり場を失い、鍬を拾って檜林へ逃げ込もうとした。