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Japanische Klassiker mit Furigana

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じろきちこうし

治郎吉格子 名作短編集(一)

吉川 英治

Lesen Sie 治郎吉格子 名作短編集(一) (じろきちこうし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 178.609 Zeichen · 362 Bildschirme

Aozora Bunko

「おお、じゃあ留守だったのか」

「いいえ、明日にでもなれば、すぐに戻って来る筈でございますから、どうぞ、御遠慮はございませぬ、三日でも、四日でも」

三五兵衛の方へ黒眼を流して、片笑くぼに笑ってみせた顔が、目に痛いくらい蠱惑だった。

わざと、髪には頭巾はかぶらないで、粋な結びに絞りの布をかけていた。肉づきがよくて、すらりとしていて、この寒々とする夕方にも、朱をふくんだかの唇は褪せないで、その、情のふかそうな眸や唇もとは、たえず細かい表情を忘れない。

三五兵衛は、つい、話のつぎ穂を忘れて歩いていたが、何かの弾みに、いきなり訊ねた。

「失礼だが、そなたは、仁介殿の娘御か」

「はい、わがまま者で、稲と申します」

「主が不在でも、もうこの時刻、ここからは戻れぬから、言葉に甘えて厄介になるといたそう」

「ええ、どうぞもうお気兼ねなく。宅はがさつ者ばかりでござんすから、おもてなしのない代りに、どんなにでもお寛ぎ遊ばして」

「旅は、そうしたところが、欣しいものでな」

「この冬空、五街道のうちでも、甲州路は一番難儀だという話、さだめしお辛うございましょう」

「辛いという事もないが、また、面白いということもない」