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Japanische Klassiker mit Furigana

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じろきちこうし

治郎吉格子 名作短編集(一)

吉川 英治

Lesen Sie 治郎吉格子 名作短編集(一) (じろきちこうし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 178.609 Zeichen · 362 Bildschirme

Aozora Bunko

「まあ、真っ蒼になって、どうなすったの賛之丞さん。……え? え? え? 気持がわるい? 寒気がするんですかえ? それほど今夜は飲んでもいないのに」

と、お稲は、自分の膝へ投げ込んだ男の体をゆすぶりながら、頬へ頬をつけていった。

「酒じゃあないの。え……笛? あ、今奥で吹いていたあの浪人の笛が」

「ううむ、もう寒気がとれた。お稲、その杯に熱い酒をいっぱい」

「気のちいさい人ねえ!」と、お稲はそれがおかしくもあり可愛いとも思った。

もう笛の音はやんでいた。最前のあの笛の音が、隙もる風のように、啾々と障子紙に泣きすがって来るようなのを聞いている間、賛之丞はお稲の膝から顔を上げなかったのである。

噂のとおり、賛之丞はちょっと女好きのしそうな眉目に優形な肩幅を落すくせを持っている。だがその眸の底には、寸間も休まらないというような恐怖をどきどきと潜ませているようだ。

「侍の癖にさ」

お稲は笑って、背なかを打った。

「さ。熱い酒をグッとほして、度胸をおつけなさいよ、度胸をね。――お前さんのような退け目を取っていたひには、一生涯、あんな蟷螂みたいな細ッこい浪人に、びくびくしていなけりゃならないじゃありませんか」