Japanische Klassiker mit Furigana
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じろきちこうし
治郎吉格子 名作短編集(一)
吉川 英治
Lesen Sie 治郎吉格子 名作短編集(一) (じろきちこうし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 178.609 Zeichen · 362 Bildschirme
「お前さん、そんな私だと、思っているの」
「だが、おれのような敵持ち、そして、弱気な人間はさ……」
「私は、それを好いているんだよ。気の強い男ならば、いくらも部屋にいるじゃないか」
「もし、おれが三五兵衛に討たれたら、お前は、どうするね」
「また、そんなことを。私がそばにいる以上は」
「いやさ、もしかという場合に」
「後を追って死んで行くわ。ねえ、賛之丞さん、二人は、死んでもだよッ……死んでもだよ……」
と、お稲は激しい力をいれて、男の体をゆすぶると、目眩めくような情熱にうずかれて、そのまま何もかも忘れてしまいそうになった。
だが、男の気持は、それに合致して行けなかった。賛之丞は厚ぼったい胸の下に息がつまって、思わずそれから身をすり抜けて、
「こうしちゃあいられない晩だ。――おれも今夜はきっとやって見せてやる。あいつの息の根をとめてやる! なに、出来ないことがあるものか」
と、膳を寄せて、手酌で四、五杯たてつづけた。
「だが、どうしたろうネ、仙吉のやつは」
「うまくやるに違いない。あの抜け目のない男のことだから」
「そうとは思うけれど、遅いじゃないか。ほかの乾分はさっきから、鳴りをしずめて待っているのに」