Japanische Klassiker mit Furigana
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じろきちこうし
治郎吉格子 名作短編集(一)
吉川 英治
Lesen Sie 治郎吉格子 名作短編集(一) (じろきちこうし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 178.609 Zeichen · 362 Bildschirme
見る間に、草鞋の型がつく。
「木賃はないし……」
彼は、戻りかけては、また先へ歩いた。もうそこは、村端れの土橋だった。
「そうだ、これも行の一つ。朝までに凍えて死ねば、それまでのこと……」
どこの納屋か、藁が積んである。それへ、笈をおろし、軒先に屈みこんで、足の先に積ってくる雪を見ていた。見ているまに、指がかくれ、甲が隠れ、今に体も埋まるかと思われるほど、風は、伊吹の雪を送ってきた。
「まあ」
ふいに、後ろの戸が開いて、戸の隙間から女の顔が見えた。人は住まない外納屋と思っていた心蓮は、あっと、驚きの目をふりあげた。
「旅のお方。先ほどから、気づいてはおりましたが、女一人、父が戻るまでは、お上げ申すわけには参りませぬが、この雪に、そんな所においでなされては、凍え死にまする。――土間へ這入って、芋粥なと召し喰がりませ」
「かたじけない――」と、心蓮は、雪と共に、戸の内へ飛びこんで、はあ、と息で両手を温めた。
炉には、芋粥が、ふつふつと煮えていた。
「さ、そこで」
と、女は、炉の火を、火桶に移し、また芋粥を茶碗に盛って、土間の框へおいた。
心蓮は、人心地がついた。