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Japanische Klassiker mit Furigana

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じろきちこうし

治郎吉格子 名作短編集(一)

吉川 英治

Lesen Sie 治郎吉格子 名作短編集(一) (じろきちこうし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 178.609 Zeichen · 362 Bildschirme

Aozora Bunko

ずるずるッと廊下を引摺って行こうとする。もの蔭にみていた棗は唇の色を失って顫えていた。

すると、煙管を咥えて、今まで黙然としていた久米一が不意に起って、百助の腰をドンと蹴飛ばした。

「あっ」と、庭先へ打っ倒れた窯焚きの百助。何か叫ぼうとしたけれども、ぬッくと、縁先に突っ立った久米一の形相をみると、思わず骨身が竦んでしまった。

鈴木杢之進も、その血相には気をのまれた。よく山の者が久米一の傲慢増長を憎んで、かげ口に増長天王と悪口をいっているが、かりそめにも、この大川内で窯焚きの上手では右へ出る者のない百助を、足蹴にした憤怒慢心の今の姿は、まったく、増長天王そのものの相であると思った。

「た、短気なことをなされるな」

と杢之進、とにかく割って入ったが、百助は嚇ッとなって、久米一の顔を睨み上げた。

「やい、な、なんで俺を足蹴にしたッ」

「毒蛇といってあきたらねえ人非人、足蹴ぐらいは易いこったわ」

「人非人だと? おい久米一、汝はどれほどな名人だか知らねえが、余り慢心して気まで変にならねえがいい。御法度を破って、秘法を盗みに、他国から住み込んでいる廻し者を、俺が見破ってやるのは、取りも直さず汝の落度を防いでやることになるんだ。