Japanische Klassiker mit Furigana
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じろきちこうし
治郎吉格子 名作短編集(一)
吉川 英治
Lesen Sie 治郎吉格子 名作短編集(一) (じろきちこうし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 178.609 Zeichen · 362 Bildschirme
「それ見ねえ、おれの眼は、やっぱり違っていなかったのだ。して国元はどちらだね」
「鳥取の池田家に仕えます者で、はい、因州です。父は納戸方で七十石ほど頂戴しておりましたが、先頃死亡いたして、家名もそのまま潰れかかっているような次第で」
「意気地のねえ話じゃないか、お前さんに跡目が嗣げないのか」
「でもございませんが、実は、私の養母お咲と申す者が、六年程前に仲間ひとりを連れて上方へ出ましたまま、とうとう帰宅いたしません。――ところがその節、同藩の重役から二百金の金を預かりまして、烏丸の某家から譲り受ける約束をした元贇焼の花瓶、安南絵の壺を受け取って来てもらいたいとの事で、ついでに、頼まれて出立いたしました」
「なるほど」
「然るに、養母のお咲も、同行した仲間の一平という者も、そのまま鳥取へ立ち帰りませんのみか、頼りも沙汰もなく、足かけ六年打過ぎてしまいました。当惑したのは、貧困な父でした」
「そうだろうとも」
「おまけに生来病弱であったため、それを苦患にして、幾分天寿を早めたかと思われます」
「で、その金の方も、安南絵の壺とかも、いまだに話のかたがつかねえという理由かい」