Japanische Klassiker mit Furigana
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じけいろく
自警録
新渡戸 稲造
Lesen Sie 自警録 (じけいろく) von 新渡戸 稲造 (にとべいなぞう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 168.224 Zeichen · 328 Bildschirme
といってありがたく頂戴する。も一つ与ろうとすると今度はそうありがたく思わない。
「塩加減が悪いから塩をまいていただきたい」「香の物をつけていただきたい」
という注文が出る。
三つめには、「握飯ばかりではなんですから塩引でも」という。
四つめには「塩物ばかりでは喉が乾く、刺身を」といいだす。乞食のごとき者でさえも、その欲望を満たそうとすれば、どこまで行っても満足せぬ。
「八百膳」の料理を奢られても、三日続けて食わさるれば、不足を訴える。帝国ホテルの御馳走でも、たび重なればいやになる。食物だけのことを望めば、人間はいかなる酒池肉林に入れても永く満足はせぬものである。
人間には絶対的幸福はけっして得られるものでない。また得られぬはずのものである。この乞食が三日も飯を食わぬときにいちばんに痛切に感ずるものは胃の腑である。握飯でも食いたいというのが彼の理想である。彼の理想というが、これは彼の理想でなくしてその実胃の腑の理想である。腹がいっぱいになり刺身が食いたいというのは、腹の理想でなく、舌の理想である。あるいは着物が着たいとか、高位につきたいとか、人に褒められたいとか、世の中に大きな顔がしたいとかいうは、虚栄心を充たす理想である。