Japanische Klassiker mit Furigana
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どうひょう
道標
宮本 百合子
Lesen Sie 道標 (どうひょう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 846.457 Zeichen · 1672 Bildschirme
感じられた。
「お父様が、その育英資金に加わって下すったの、ありがとうございました」
その晩、一日の終りにいつもそうして時をすごすとおりアーク燈にてらされている公園の木立を見おろすホテルの部屋の窓ぎわに立って、伸子は、公園の散歩で父からきいたことを思いかえしていた。
悲しみと名づけられるこころもち、涙ぐむこころもち、そういう感傷は、佃が亡くなったときいたときから、伸子のなかになかった。しんとして、まじめにひきしめられた思いがあった。――佃の生涯は終った――佃の生涯は終った――その思いをたどっているうちに、伸子の心は自覚されていなかった一つの区切りのようなものを見出した。佃と自分とのいきさつは、完結した。その事実の新しい確認がある。
伸子は、これまで、佃に対して、何かの責任を感じながら暮していたのだろうか。伸子にそんな意識はなかった。だけれども、思いがけず佃の亡くなったしらせをきいた今、伸子の心のうちに強くなりまさるのは「完結した」という意識だった。伸子が何もしらなかった今年の四月のあるときに、伸子の過去の生涯に、一つの大きいピリオドがうたれた。伸子はきょうまで何もしらないままモスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)を出発して、ロンドンへ来た。