Japanische Klassiker mit Furigana
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パンドラのはこ
パンドラの匣
Lesen Sie パンドラの匣 (パンドラのはこ) von Dazai Osamu (太宰 治) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 192.644 Zeichen · 386 Bildschirme
自分の手で耕した畑に、お百姓の姿で倒れて死ぬのは本望だ。えい、何でもかまわぬ早く死にたい。目まいと、悪寒と、ねっとりした冷い汗とで苦しいのを通り越してもう気が遠くなりそうで、豆畑の茂みの中に仰向に寝ころんだ時、お母さんが呼びに来た。早く手と足を洗ってお父さんの居間にいらっしゃいという。いつも微笑みながらものを言うお母さんは、別人のように厳粛な顔つきをしていた。
お父さんの居間のラジオの前に坐らされて、そうして、正午、僕は天来の御声に泣いて、涙が頬を洗い流れ、不思議な光がからだに射し込み、まるで違う世界に足を踏みいれたような、或いは何だかゆらゆら大きい船にでも乗せられたような感じで、ふと気がついてみるともう、昔の僕ではなかった。
まさか僕は、死生一如の悟りをひらいたなどと自惚れてはいないが、しかし、死ぬも生きるも同じ様なものじゃないか。どっちにしたって同じ様につらいんだ。無理に死をいそぐ人には気取屋が多い。僕のこれまでの苦しさも、自分のおていさいを飾ろうとする苦労にすぎなかった。古い気取りはよそうじゃないか。君の手紙の中に「悲痛な決意」などという言葉があったけれども、悲痛なんてのは今の僕には、何だか安芝居の色男役者の表情みたいに思われる。