Japanische Klassiker mit Furigana
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パンドラのはこ
パンドラの匣
Lesen Sie パンドラの匣 (パンドラのはこ) von Dazai Osamu (太宰 治) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 192.644 Zeichen · 386 Bildschirme
「何か御用?」と真面目に尋ねる。
僕は脚の運動をしながら、
「枕元、枕元。」と小声で言った。
竹さんは枕元の回覧板を見て、手に取り上げ、ざっと黙読してから、
「これ、貸してや。」と落ちついた口調で言ってその回覧板を小脇にはさんだ。
「あやまちを改むるに、はばかる事なかれだ。早いほうがいい。」
竹さんは何もかも心得顔に、幽かに首肯き、それから枕元の窓のほうに行って、黙って窓の外の景色を眺めている様子である。
しばらくして、窓の外に向い、
「源さん、御苦労さまやなあ。」と少しも飾らぬ自然の口調で呟いた。窓の下で、小使いの源さんという老人が、二、三日前から草むしりをはじめているのだ。
「お盆すぎにな、」と源さんは窓の下で答える。「いちどむしったのに、またこのように生えて来る。」
僕は、竹さんの「御苦労さまやなあ」という声の響きに唸るほど、感心していた。回覧板の事など、ちっとも気にしていないらしい落ちついた晴朗の態度にも感心したが、それよりも、あのいたわりの声の響きの気品に打たれた。御大家のお内儀が、庭番のじいやに、縁先から声をかけるみたいな、いかにも、のんびりしたゆとりのある調子なのである。