Japanische Klassiker mit Furigana
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パンドラのはこ
パンドラの匣
Lesen Sie パンドラの匣 (パンドラのはこ) von Dazai Osamu (太宰 治) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 192.644 Zeichen · 386 Bildschirme
このごろ少し痩せたようだぜ。あとで、マタイの六章を読んであげよう。」
いい兄さんなのだ。帝大の英文科に、四年前にはいったのだけれども、まだ卒業しない。いちど落第したわけなんだが、兄さんは平気だ。頭が悪くて落第したんじゃないから、決して兄さんの恥辱ではないと僕も思う。兄さんは、正義の心から落第したのだ。きっとそうだ。兄さんには、学校なんか、つまらなくて仕様が無いのだろう。毎晩、徹夜で小説を書いている。
ゆうべ兄さんから、マタイ六章の十六節以下を読んでもらった。それは、重大な思想であった。僕は自分の現在の未熟が恥ずかしくて、頬が赤くなった。忘れぬように、その教えをここに大きく書き写して置こう。
「なんじら断食するとき、偽善者のごとく、悲しき面容をすな。彼らは断食することを人に顕さんとて、その顔色を害うなり。誠に汝らに告ぐ、彼らは既にその報を得たり。なんじは断食するとき、頭に油をぬり、顔を洗え。これ断食することの人に顕れずして、隠れたるに在す汝の父にあらわれん為なり。さらば隠れたるに見たまう汝の父は報い給わん。」
微妙な思想だ。これに較べると、僕は、話にも何もならぬくらいに単純だった。