Japanische Klassiker mit Furigana
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パンドラのはこ
パンドラの匣
Lesen Sie パンドラの匣 (パンドラのはこ) von Dazai Osamu (太宰 治) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 192.644 Zeichen · 386 Bildschirme
自分が絶世の美男子だったら、ひとの容貌なんかには、むしろ無関心なものだろうと思う。ひとの醜貌に対しても、頗る寛大なものだろうと思う。ところが僕のように、自分の顔が甚だ気にいらない者には、ひとの容貌まで気になって仕様がないのだ。さぞ憂鬱だろうな、と共感を覚えるのである。無関心では居られないのだ。僕の顔など、兄さんに較べて、百分の一も美しくない。僕の顔には、精神的なものが一つも無いのだ。トマトのようなものだ。兄さんは御自分では、色の黒いのを自嘲して居られるが、いまに文筆で有名になったら、小説界随一の美男子だなんて人に言われて、その時は、まごついてしまうに違いない。ちょいとプウシキンに似ていますよ。僕の顔は、百人一首の絵札の中にあります。うつらうつら眠って、いろいろな夢を見た。なんでも上野駅あたりの構内らしかったが、僕は四方を汽車に取りかこまれながら、風呂桶のお湯にひたって、きょろきょろしていた。突然、頭上で、ベートーヴェンの第七が落雷の如く響いた。あわてふためいて僕は立ち上り、裸のままで両手を挙げ、指揮をはじめた。或る時は激しく、或る時は悠然と大きく、また或る時は全身を柔かに悶えさせて指揮した。