Japanische Klassiker mit Furigana
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パンドラのはこ
パンドラの匣
Lesen Sie パンドラの匣 (パンドラのはこ) von Dazai Osamu (太宰 治) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 192.644 Zeichen · 386 Bildschirme
僕も笑った。
「何を読みますか?」瀬川国十郎が、金歯をちらと光らせて言った。
「ファウスト!」ずいぶん意気込んで言ったつもりなのだが、国十郎は軽く首肯いて、
「どうぞ。」
僕はポケットから鴎外訳の「ファウスト」を取り出し、れいの、花咲ける野の場を、それこそ、天も響けと読み上げた。この「ファウスト」を選ぶまでには、兄さんと二人で実に考えた。春秋座には歌舞伎の古典が歓迎されるだろうという兄さんの意見で、黙阿弥や逍遥、綺堂、また斎藤先生のものなど色々やってみたが、どうも左団次や羽左衛門の声色みたいになっていけない。僕の個性が出ないのだ。そうかといって、武者小路や久保田万太郎のは、台詞がとぎれて、どうも朗読のテキストには向かないのだ。一人三役くらいで対話の朗読など、いまの僕の力では危かしいし、一人で長い台詞を言う場面は、一つの戯曲にせいぜい二つか三つ、いや何も無い事さえあって、意外にも少いものなのだ。たまにあるかと思うと、それはもう既に名優の声色、宴会の隠芸だ。何でもいいから、一つだけ選べ、と言われると実際、迷ってしまうのだ。まごまごしているうちに試験の期日は切迫して来る。