Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
パンドラのはこ
パンドラの匣
Lesen Sie パンドラの匣 (パンドラのはこ) von Dazai Osamu (太宰 治) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 192.644 Zeichen · 386 Bildschirme
「ごはんを残したよ。」
竹さんは、僕のほうをちっとも見ないで、おひつの蓋をちょっとあけてみて、
「いやらしい子!」と、ほとんど僕にも聞きとれなかったくらいの低い声で言ってお膳を持ち上げ、そうしてまた、何事も無かったような澄ました顔で部屋から出て行った。
竹さんの「いやらしい」は口癖のようになっていて、何の意味も無いものらしいが、しかし、僕は女から「いやらしい」と言われると、いい気はしない。実に、いやだ。以前の僕だったら、たしかに竹さんを一発ぴしゃんと殴ったであろう。どうして僕はいやらしいのだ。いやらしいのは、お前じゃないか。昔は女中が、贔屓の丁稚の茶碗にごはんをこっそり押し込んでよそってやったものだそうだが、なんとも無智な、いやらしい愛情だ。あんまり、みじめだ。ばかにしちゃいけない。僕には、あたらしい男としての誇りがあるんだ。ごはんというものは、たとい量が不足でも、明るい気持でよく噛んで食べさえすれば、充分の栄養がとれるものなのだ。竹さんを、もっとしっかりしたひとだと思っていたが、やっぱり、女はだめだ。ふだんあんなに利巧そうに涼しく振舞っているだけに、こんな愚行を演じた時には、なおさら目立って、きたならしくなる。