Japanische Klassiker mit Furigana
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パンドラのはこ
パンドラの匣
Lesen Sie パンドラの匣 (パンドラのはこ) von Dazai Osamu (太宰 治) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 192.644 Zeichen · 386 Bildschirme
よいものだと思った。人間は死に依って完成せられる。生きているうちは、みんな未完成だ。虫や小鳥は、生きてうごいているうちは完璧だが、死んだとたんに、ただの死骸だ。完成も未完成もない、ただの無に帰する。人間はそれに較べると、まるで逆である。人間は、死んでから一ばん人間らしくなる、というパラドックスも成立するようだ。鳴沢さんは病気と戦って死んで、そうして美しい潔白の布に包まれ、松の並木に見え隠れしながら坂路を降りて行く今、ご自身の若い魂を、最も厳粛に、最も明確に、最も雄弁に主張して居られる。僕たちはもう決して、鳴沢さんを忘れる事が出来ない。僕は光る白布に向って素直に合掌した。
けれども、君、思い違いしてはいけない。僕は死をよいものだと思った、とは言っても、決してひとの命を安く見ていい加減に取扱っているのでも無いし、また、あのセンチメンタルで無気力な、「死の讃美者」とやらでもないんだ。僕たちは、死と紙一枚の隣合せに住んでいるので、もはや死に就いておどろかなくなっているだけだ。この一点を、どうか忘れずにいてくれ給え。僕のこれまでの手紙を見て、君はきっと、この日本の悲憤と反省と憂鬱の時期に、僕の周囲の空気だけが、あまりにのんきで明るすぎる事を、不謹慎のように感じたに違いない。