Japanische Klassiker mit Furigana
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パンドラのはこ
パンドラの匣
Lesen Sie パンドラの匣 (パンドラのはこ) von Dazai Osamu (太宰 治) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 192.644 Zeichen · 386 Bildschirme
怒るだろう。こないだも、竹さんに、「ひばりは、このごろ、あかんな。」と言われたけれど、本当に、僕にはこのごろ少し「あかん」ところがある。けさの大掃除の時に、塾生全部が室内のほこりを避ける意味で、新館の前庭にちょっと出たが、おかげで僕は実に久し振りで土を踏む事が出来た。時々こっそり、裏のテニスコートなどに降りてみる事はあっても、正々堂々の外出の許可を得たのは、僕がここへ来てからはじめての事であった。僕は松の幹を撫でた。松の幹は生きて血がかよっているものみたいに、温かかった。僕はしゃがんで、足もとの草の香の強さに驚き、それから両手で土を掬い上げて。そのしっとりした重さに感心した。自然は、生きている、という当り前の事が、なまぐさいほど強く実感せられた。けれども、そんな驚きも、十分間くらい経ったら消滅してしまった。何も感じなくなった。痲痺してしまって平気になった。僕はそれに気がついて、人間の馴致性というのか、変通性というのか、自身のたより無さに呆れてしまった。最初のあの新鮮なおののきを、何事に於いても、持ちつづけていたいものだ、とその時つくづく思ったのだが、この道場の生活に対しても、僕はもうそろそろいい加減な気持を抱きはじめているのではなかろうか、とマア坊に怒られてはっと思い当ったというわけなのだ。