Japanische Klassiker mit Furigana
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けんきょうじゅなん
剣侠受難
国枝 史郎
Lesen Sie 剣侠受難 (けんきょうじゅなん) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 195.479 Zeichen · 394 Bildschirme
「ああ流浪か、それもいいなあ。そうだ、戦をするよりもな。……人は誰もかも流浪しているよ。おちつけるような世界はない。……おいでおいで、どこでもおいで!」
「どうぞご用意あそばしませ」
「わしはいかないよ」と老人はいった。「ここにいるのだ、ああここにな! あそこへ籠って、あそこへな。……」滝の方を指さした。「わしの命も永くはあるまい。……おこもりをして死ぬつもりだよ」岩組みの方へ歩いてゆく。と、将右衛門を振り返った。「お別れをお告げ! このお方へ!」
「天童よ!」と将右衛門、かたく合掌をしたものである。
しだいに暁に近づいてゆく。片われ月が空へかかった。ちょうどこの頃の事である。富士見高原のふもとにあたって、一点たいまつの火が見えた。のぼって来る二個の人影がある。
「もうすぐですぜ、ねえあねご」
「やっとそれでも行きついたかねえ」
木地師の郷の方角へ、話しながら歩いて行く。
恋人を追って
かなり燃え尽きた松明をかかげ、歩いて行くのは早引の忠三、道中師風の姿である。それと並んで歩いて行くのは、虚無僧姿のイスラエルのお町、明けに近い富士見の高原に、二人の足音がシトシトと響く。