Japanische Klassiker mit Furigana
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みっつのあざ
怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集
小酒井 不木
Lesen Sie 怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集 (みっつのあざ) von 小酒井 不木 (こざかいふぼく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 196.140 Zeichen · 396 Bildschirme
なってじっとして居りました。
ふと、夜半に眼がさめると、胸に、はしかゆいような擽たいような感じがしました。はっと思うと、次の瞬間けたたましい咳嗽が起って、なお暖かい血は猛烈に口腔に跳ね上りました。咳嗽、又、咳嗽、妻はコップを持って来てくれましたが、見る見るうちに、コップは紅いもので一ぱいになりました。驚いた妻は洗面器を持って来て受けました。私は左を下にして横わったまま咯きましたが、勢い余った血液は鼻腔の方からも突き出されて来て、顔の下半分はねばねばしたもので塗りつぶされました。胸は蜂の巣を突ついたような音を立てる、かと思うと、又、雷のようにごろごろ言いました。洗面器の半分ほどは、たちまちに充され、この儘全身の血液を咯き尽すのではないかと思いました。白いシーツの上には紅黒い大小の斑点が染め出され、洗面器を支える妻の手は頻りに顫えました。瓦斯灯はじじと音を立てる、夜はしーんと静まりかえる。血を咯く私は一種の厳粛な思いに襲われました。
然し、幸いにその咯血はとまりました。咯血の終った跡の心持は、一寸形容が出来ません。頭は一時はっきりと冴えかえりました。