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Japanische Klassiker mit Furigana

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みっつのあざ

怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集

小酒井 不木

Lesen Sie 怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集 (みっつのあざ) von 小酒井 不木 (こざかいふぼく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 196.140 Zeichen · 396 Bildschirme

Aozora Bunko

「よし子をかえせ。よし子は殺されたか」

近づいた男が、こう呟やくのをきいて、その巡査ははっとしました。

煙草屋の娘の名はよし子ではなかったか。こう思うと巡査は、こいつ怪しい曲者とばかり、矢庭に、その男に躍りかかりました。

「よし子をかえせ。よし子は殺されたか」

男は巡査に捕えられても一向平気で、この言葉を繰返しました。そうして巡査が、何を言っても、ただ、両眼を据えて、じっと巡査の顔をにらむばかりで、同じ言葉を繰返すばかりでした。

巡査は男を警察署に引致しました。そこで署長は、その男に向って、色々たずねましたけれども、男は訊問に対しては返事をしないで、ただ例の言葉を口走るばかりでした。

署長の鑑定によると、この男は多分煙草屋の二人殺しの犯人で、良心の苛責のために発狂し、殺した女の名を呼ぶのであろうということでした。然し、その男が何処のもので、何を職業としているのか少しもわかりませんでした。帽子もかぶらなければ、洋服の上衣も着ず、ポケットの中には、何物もなかったので、その男の身許を判別することは不可能だったのであります。

けれども、この男が、兇行のあった煙草屋の附近をさまよって居たことと、被害者の一人の名を口走り、而も「殺されたか」