Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しんせい

新生

島崎 藤村

Lesen Sie 新生 (しんせい) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 334.815 Zeichen · 663 Bildschirme

Aozora Bunko

彼はほとほと生活の興味をすら失いかけた。日がな一日侘しい単調な物音が自分の部屋の障子に響いて来たり、果しもないような寂寞に閉される思いをしたりして、しばらくもう人も訪ねず、冷い壁を見つめたまま坐ったきりの人のように成ってしまった。これはそもそも過度な労作の結果か、半生を通してめぐりにめぐった原因の無い憂鬱の結果か、それとも母親のない幼い子供等を控えて三年近くの苦艱と戦った結果か、いずれとも彼には言うことが出来なかった。

中野の友人から貰った手紙の終の方には、こんな事も書いてある。

「岸本君、僕はもう黙して可い頃であろう。倦怠と懶惰は僕が僕自身に還るのを待っている。眼も疲れ心も疲れた。ふと花壇のほとりを見やると、白い蝴蝶がすがれた花壇に咲いた最初の花を探しあてたところである。そしてその蝴蝶も今年になって初めて見た蝴蝶である。僕の好きな山椿の花も追々盛りになるであろう。十日ばかり前から山茱黄と樒の花が咲いている。いずれも寂しい花である。ことに樒の花は臘梅もどきで、韵致の高い花である。その花を見る僕の心は寂しく顫えている」こう結んである。

中野の友人には子が無かった。