Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
しんせい
新生
島崎 藤村
Lesen Sie 新生 (しんせい) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 334.815 Zeichen · 663 Bildschirme
船客もまだ極く少い時で、その高い甲板の上には独りで寂しそうに海を眺めている長い髯を生した一人の仏蘭西人の客を見つけるぐらいに過ぎなかった。岸本は艫の方の欄に近く行った。そこから故国の方の空を望んだ。仏国メサジュリイ・マリチイム会社に属するその汽船は四月十三日の晩に神戸を出て十五日の夜のうちには早や上海の港に入った程の快よい速力で、上海から更に香港へ向け波の上を駛りつつある時であった。遠く砕ける白波は岸本の眼にあった。その眺めは、国の方で別れて来た人達と彼自身との隔たりを思わせた。一日は一日よりそれらの人達から遠ざかり行くことをも思わせた。あの東京浅草の七年住慣れた住居の二階から、あの身動きすることさえも厭わしく思うように成った壁の側から、ともかくもその波の上まで動くことが出来た不思議をも胸に浮べさせた。彼は深林の奥を指して急ぐ傷いた獣に自分の身を譬えて見た。
海風の烈しさに、岸本は高い甲板を離れた。船梯子に沿うて長い廊下を見るような下の甲板に降りた。そこにも一人二人の仏蘭西人の客しか見えなかった。明るい黄緑な色の海は後方にして出て来た故国の春の方へ岸本の心を誘った。