Japanische Klassiker mit Furigana
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しんせい
新生
島崎 藤村
Lesen Sie 新生 (しんせい) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 334.815 Zeichen · 663 Bildschirme
「皆旅に来て苦労するのかなあ」
思わずそれを言って見て、パスツウルの通りからモン・パルナッスの停車場へと取り、高架線の鉄橋の下をエドガア・キネの並木街へと出、肉類や野菜の市の立つ町を墓地の方へ行かずにモン・パルナッスの通りへと突切った。並木のかげに立つネエ将軍の銅像のあるあたりは朝に晩に岸本の歩き廻るところだ。六方から町の集まって来ている広場の一方にはルュキサンブウルの公園の入口を望み、一方には円い行燈のような天文台の石塔を望んだ。そこまで行くと、下宿も近かった。
「東京の友達もどうしているだろう――」
こう思いやって、乾き萎れたようなプラタアヌの若葉の下を歩いて行った。
岸本に取っては旅の心を引く一つの事蹟があった。他でもない、それはアベラアルとエロイズの事蹟だ。英学出の彼はあの名高い学問のある坊さんに就いて精しいことは知らなかった。でも彼がアベラアルの名に親しみ始めたのはずっと以前のことである。アベラアルとエロイズの愛。どれ程青年時代の岸本はその奔放な情熱を若い心に想像して見たか知れない。あの学問のある尼さんのためには男も捨て僧職も擲ったというアベラアルの名はどれ程若かった日の彼の話頭に上ったか知れない。