Japanische Klassiker mit Furigana
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しんせい
新生
島崎 藤村
Lesen Sie 新生 (しんせい) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 334.815 Zeichen · 663 Bildschirme
時には彼女は夫の身体を自分の背中に乗せて、そこにある書架の前あたりをヨロヨロしながら歩き廻ったのも岸本の現に眼前に見るその同じ部屋の内だ。長いこと妻を導こう導こうとのみ焦心した彼は、その頃に成って、初めて何が園子の心を悦ばせるかを知った。彼は自分の妻もまた、下手に礼義深く尊敬されるよりは、荒く抱愛されることを願う女の一人であることを知った。
それから岸本の身体は眼を覚ますように成って行った。髪も眼が覚めた。耳も眼が覚めた。皮膚も眼が覚めた。眼も眼が覚めた。その他身体のあらゆる部分が眼を覚ました。彼は今まで知らなかった自分の妻の傍に居ることを知るように成った。彼が妻の懐に啜泣しても足りないほどの遣瀬ないこころを持ち、ある時は蕩子戯女の痴情にも近い多くのあわれさを考えたのもそれは皆、何事も知らずによく眠っているような自分の妻の傍に見つけた悲しい孤独から起って来たことであった。岸本の心の毒は実にその孤独に胚胎した。
岸本はずっと昔の子供の時分から好い事でも悪い事でも何事もそれを自分の身に行って見た上でなければ、ほんとうにその意味を悟ることが出来なかった。