Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
しんせい
新生
島崎 藤村
Lesen Sie 新生 (しんせい) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 334.815 Zeichen · 663 Bildschirme
到頭岸本は八月の半ば過ぎ頃までに纏めたいと思った旅行記の続稿を予定の三分一も書くことが出来なかった。「年を取れば取ったで複雑な恋愛の境地があろうとは僕も考える――しかし、恋なんてことは、もう二度と僕には来そうもない」とは曾て彼が異郷の徒然を慰めようとして画家の岡なぞに語った述懐であった。実際そう思って歩いて来たこの世の旅の途中に、仕事もろくに手につかず夜もろくに眠られないような恐ろしい情熱が彼を待受けようとは。彼は自分の内部から押出して来たこのパッションの激浪をどうなりともして衝き切らねば成らないような心をもって、その夏の「峠」を越した。
涼しい雨がやって来て離座敷の縁先を濡すような日もあった。雨はよく深い廂の下まで降り込んだ。母屋へ通う廊下のところなぞは上草履でも穿かなければ歩かれなかった。そういう日には特に下宿住居の心持や、乾燥した巴里の方の町の空でこの雨の恋しかったことなどが岸本の胸に浮んで来て、静かに自己を省みる心に返らせた。彼は到底このままの節子との関係を長く持ち続けて行くことの出来ないのを思った。もっと二人の出発点に遡って、根本から考え直して見ねば成らない時が来たように思った。