Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しんせい

新生

島崎 藤村

Lesen Sie 新生 (しんせい) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 334.815 Zeichen · 663 Bildschirme

Aozora Bunko

節子が谷中をさして帰りかける頃には、もう寒いくらいの秋雨が来た。その翌日に成って彼女は岸本のところへ手紙を寄せて、帰って行く電車の間なぞが丁度雨の降るさかりであったから、ひどく濡れたりしたが、お蔭で大した困難もなく谷中の家に着いたと書いてよこした。それやこれやで手が大変に痛んで、御飯の時にも箸を持つことが出来ず、左の手に匙を持つ始末であったが、油を塗って一晩休んだら今朝は余程好くなったと書いてよこした。彼女は又、身の辺の澱んだ空気のことを書いて、その中に大きな声さえ出すことも出来ないように坐って、いやだいやだと思いながら今の境遇に引かれて行くのは、矢張自分が弱いからだというような嘆息をも書いてよこした。その手紙の奥には、涙ににじんだ左の数行の文字も書いてあった。「先刻から何時間ここに坐っておりましょう。もう薄暗くなりました――わたしはもう何物も要りません、どうぞ最後の日まで愛させて下さい……」

百二

一度岸本の心に転機が萌してからは、眼前にある平和も、かりそめの安逸も、自分に取って体裁の好く都合の好いようなことも、結局それをどうすることも出来なかった。