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Japanische Klassiker mit Furigana

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じろきちこうし

治郎吉格子 名作短編集(一)

吉川 英治

Lesen Sie 治郎吉格子 名作短編集(一) (じろきちこうし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 178.609 Zeichen · 362 Bildschirme

Aozora Bunko

そんなお祭り気分ではない、うけた無念は深刻なものだ。賛之丞があれだからと言って、とうてい仮借することはできない。

亡父、亡妹、孤独になって生きている自分。たれ一人を考えても、その怨みのふかさは、討って足りない仇である。一寸試しではまだ足りない。生かしておくに限るのだ。

生かしておいて、おれは時折、おれの影を見せさえすれば、賛之丞はこの安成三五兵衛が、いかに執念ぶかい、冷酷な、おそるべき人間だかということを、紀州にいた頃からよく心得ている男だ。

それで、おれの復讐は、日一日、刻一刻ずつ果されてゆくわけになる。

しかし、そうしているまに、万一、彼が病死でもしたらという惧れもあるが、それでもいい、おそらく、その死にかたも、敵討以上なものに違いない。

――三五兵衛はいつまで炬燵に眼を閉じていた。

そんな事を胸にくり返しながら、実は、非常な神経を働かせて、広い屋内の空気を隈なく探っていたが、彼に少し、気がかりな事が起った。

「はてな、逃げないぞ、賛之丞のやつ」

どうも、彼の神経は、そう感じられてならない。

「向うの部屋にさしている明りの色、柔らかな笑い声、乾分たちの足音や眼ざし、少しもそんな気ぶりがないわい。