Japanische Klassiker mit Furigana
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じろきちこうし
治郎吉格子 名作短編集(一)
吉川 英治
Lesen Sie 治郎吉格子 名作短編集(一) (じろきちこうし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 178.609 Zeichen · 362 Bildschirme
と、いやしい眼つきで、ささやき合った。
そして、一人が、百の耳のそばで、
「ありゃ、何処のだい?」
と、訊ねた。
百が、何げなく、今、賭場から追われて行った浪人の連れの者だと話すと、博労たちは険しい眼をお稲にあつめて、
「こいつあいい人質を置いて行きゃあがったぜ。おい、御新造――」
と、立ちかけたかの女の肩を突いて、そのまわりを取り巻いた。
「おめえの亭主か、何か知らねえが、あのいかさま浪人めに、俺ッちは、四十両も捲きあげられたんだ。あいつが、捕まって来れや、呑んだ駒を吐き出させるが、さもねえ時にゃ、おめえは人質だ、そこをうごくこたあならねえぞ」
「そうだ、この容貌なら、四十両にゃ、売れるだろう」
「あしたの市でか」
「まさか」
と、どっと笑って、
「コブ付じゃ」
「なに、そんな物は、少しばかり金をつけてやれば、どこへでも、片がつく」
野性にみちた多数の眼である。じろじろと、無遠慮に、女の襟あしを見、横顔をのぞき、曲線をなでまわして、騒いでいたが、先に、三五兵衛を追って行った長脇差のうち、二人が、息をはずませて、
「忌々しい畜生だ」
と、さけびながら、そこへ帰って来た。