Japanische Klassiker mit Furigana
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じろきちこうし
治郎吉格子 名作短編集(一)
吉川 英治
Lesen Sie 治郎吉格子 名作短編集(一) (じろきちこうし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 178.609 Zeichen · 362 Bildschirme
「百かよ? ……」
「おう、おらだい」
「おそかったのう」
「おっ母は、鳥眼だから、はやく、けえろうと思ってたが、なじみの博労衆に、たのまれごとをされて、つい、いやといえず……」
「なんじゃ」
「市の景気で、野ばくちが押っ開かれたんじゃ。それで張番をたのまれちまって」
「ばか者が! これから先、そんなことを頼まれるでねえぞよ」
「おらは、ばくちが嫌いだが、つい、地鉄を仕入れる金がすこしばかり欲しかったものだから」
「銭なんかもらって、もし、八州のお旦那にでも捕まったら、ぬしゃあ、どうする」
と、いつにない烈しい母の叱言だった。
百は、あたまを掻いて、
「もうやめた。きょう限り、頼まれても、そんなことはやらねえにきめたから、安心さつしゃい」
「だが、くたびれたろう。湯にはいれ」
「眼のわるいくせにして、おっ母はまた、自分で薪を割って焚いたのか」
「だって、われは帰らず、われが帰ってから、風呂よ、飯よでは、焦れったかろうが」
「そんな、滅茶をして、またこの間みたいに、鉈で怪我をするといけねえぜ」と、百は、帯を解いて、
「日が暮れて、おっ母が、手さぐりをしはじめると、おらあ、はらはらする」