Japanische Klassiker mit Furigana
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じろきちこうし
治郎吉格子 名作短編集(一)
吉川 英治
Lesen Sie 治郎吉格子 名作短編集(一) (じろきちこうし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 178.609 Zeichen · 362 Bildschirme
でも、根気よく、構えのいい武家屋敷や、でなければ、豪家の隠宅――蔵前の札差――そんな所を、よって持ちあるいた。
麹町の岡部という番衆屋敷で、一組売ったのを皮きりに、札差町人の大口屋へ一組、また、身分は知らないが、ちょうどその店さきに居あわせた一人の武家から、今は、金のもち合せがないから、明日、屋敷の方へ、品を持って来るようにといわれた。
百は、よろこんだ。
四十両の現金をもって、木賃宿のふとんの中に、幸福感と、怖ろしさで、ふくれ上がるような、心臓の音を聞いていた。そして、田無に留守をしてくれているお稲の顔を――また母の顔を――描いては、寝た。
あくる日。
麻布芋坂の津田角右衛門――そう聞いた約束の屋敷を、かれはさがした。かなりな構えで、取次は、いいつけられてあったと見えて、
「ム、小柄を持参したか、そちらから上がって、御用部屋でお待ちいたせ」
やがて、きのう蔵前で会った四十がらみの武家が、
「わしは、当家の用人角右衛門だが」
と、いって坐った。
主人ではないのか――と百は案外だった。そして二十両の小柄を用人が買えるかしらと、すこし不安をもったが、
「昨日、お目にとまりましたあれを」