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Japanische Klassiker mit Furigana

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じろきちこうし

治郎吉格子 名作短編集(一)

吉川 英治

Lesen Sie 治郎吉格子 名作短編集(一) (じろきちこうし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 178.609 Zeichen · 362 Bildschirme

Aozora Bunko

百は、畳から、眼だけを上げて、

「や、兄弟子。――面目ねえ」と、顔をかくした。

「この野郎、よくも、師匠の偽物を作って、売り歩きやがったな。この間から、清麿の小柄を売りあるく者があるといううわさに、変だと思っていると、こちらの御用人様から親切なお知らせがあったので、きょうは、手ぐすね引いて、待っていたのだ。――さ、刀鍛冶の掟どおり、成敗してやるから来い」

縄を打って、百を、駕のなかへ、抛りこんだ。――延作のあいさつ、角右衛門の笑い声を後に、駕は、あがった。

(きまりが悪い、師匠に会うのは)

百は、かごの中で、髪の毛をかきむしった。舌でも噛んでしまいたかった。

「ご苦労――」と、駕がおりる。潜り戸があく。ひょいと見ると、百が、おぼえていた元の師匠の屋敷とはちがっていた。当時の宏壮な構えはなく、貧乏御家人でもすんでいそうな、黒塀がこいの、それも、ひどく荒れている小屋敷で、

「おいっ、誰かいねえか」

と、よぶと、三、四人のがさつなのが、延作に手をかして、

「この野郎か、師匠の名を、騙った奴は」

「庭へ、しょッ曳いて、鋳物土のかますで、押っ伏せちまえ」

十俵ばかりの土砂がますで、百は、からだをかこまれた。