Japanische Klassiker mit Furigana
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じろきちこうし
治郎吉格子 名作短編集(一)
吉川 英治
Lesen Sie 治郎吉格子 名作短編集(一) (じろきちこうし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 178.609 Zeichen · 362 Bildschirme
――で、何をもくろんでいる様子か」
「今までにない尺二寸の大玉へ、色も、今までに誰も出したことのない、赤と紫の火光を仕込んで、三河の者を、驚かしてやるんだといって、それはもう、お気の毒なくらい懸命になっております」
「赤の火色を出すって?」
「……ですから私も、つい、力づけて上げたいと思って」
「その先のことは、いわんでもよい。分っておる。――おまえ、七之助に頼まれて、わしの書庫から、門外不出の書物を幾冊か持ち出したな。そして、彼に貸してやったな」
「…………」
お芳はそのまま畳の中へ沈み込んでしまいそうな顔をした。
「あんな無学な男に、わしの書物を見せたとて、なんになるか」
「…………」
「もう貸し与えたものはしかたがない。だが、あれは大事な書物だ。教来石流の煙火の秘本だからの。小布施の高井鴻山だの、松代の佐久間象山だの、幾たびもせがんで来たが一度も見せやせん。――それとなく、早く取り戻せよ、よいか」
「……すみませんでした」
「七は、短気な男だから、わしがといわぬほうがいいぞ。おまえが気がついたようにな……」
「はい」
「分ったか」
「わかりました」
「それだけのことだな、おまえと、七との間は」