Japanische Klassiker mit Furigana
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じろきちこうし
治郎吉格子 名作短編集(一)
吉川 英治
Lesen Sie 治郎吉格子 名作短編集(一) (じろきちこうし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 178.609 Zeichen · 362 Bildschirme
「ふウむ、それで読めた。何かにつけて、てめえがおれの仕事に茶々を入れるなあ、そんな恋の怨みだったのか。可哀そうな程、ケチな野郎だ」
「だまれ、お上の役目に私怨をふくむか。――おお、いつぞや貴様は、仕事の上のことならば、果し合いもいとわんといったな」
「いったがどうした」
「藩の目付として参っているこのほうのいい条に従わぬ以上は、お上に対しても、役目の身がすまん。といって、貴様も、アアまで我を突っ張った手前、まさか今さら後悔したともいえまい。望みどおり果し合って、解決してやるから得物を持て」
と、人を罵る快味が、実はそこまでの腹はない慎吾に、思わず毅然といい放させてしまった。
「よし、待っていろ」
七には、否やがない。
脇差をとるために、彼は、からだを弾ませて、精悍に家の中へ飛びこんだ。
その間に、慎吾は、下げ緒を解いて袖をからげた。うろたえているお芳へ、頤を横に振って、幾たびも刀の柄糸をしめしたが、だんだん胸の鼓動を感じていた。
だいぶ間があった。
彼は、二つ三つ、腕の空振りを試みた。なお余裕がありそうなので、五本の指を一本一本節を折って待ち構えた。それでもなかなか見えないので、土俵の砂をふむように足馴らしをしはじめた。