Japanische Klassiker mit Furigana
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じろきちこうし
治郎吉格子 名作短編集(一)
吉川 英治
Lesen Sie 治郎吉格子 名作短編集(一) (じろきちこうし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 178.609 Zeichen · 362 Bildschirme
慎吾はのっぴきならなくなった。戸狩の者や同僚どもの手前――またお芳のてまえにも。
「よし! どういう勝負でもしてやろう。してその約束は」
「みんなに決めて貰おうじゃねえか」
「ウム、立会い勝負か」
「そうだ。おい、一同、はいってくれ。お芳も逃がさねえように連れて来てくれ」
外で揉み合っていた連中は一時に小屋の中へ雪崩れこんだ。お芳も逃げるに逃げられないで無慙な羞恥を大勢のうしろに隠していた。
しかし、村の習性か、危険物をあつかう職業的反映か、きわめて男女間の風紀が放縦で、性生活の自由なこの村の者は、眼のまえにひき起された三角葛藤をながめても、そう驚異とも感じない様子であった。
尤も、このことは、前から口には出さないが、皆うすうす知っていたので、いずれ一度はひと騒ぎを遁がれまいという予期もあったに違いない。
ただ気の毒なのは兵助老人で、お芳の性的行状をまだ少しも知らずにいる。その小締めな体つきをながめて、いつまでもわが娘は子供だと考えていた。ところが事実は、彼女には七之助の前にも、七之助さえ知らない肉の知己が四、五名もあったのである。
けれどそれを強いて兵助に知らせようとするほど無慙な者もいなかった。