Japanische Klassiker mit Furigana
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じろきちこうし
治郎吉格子 名作短編集(一)
吉川 英治
Lesen Sie 治郎吉格子 名作短編集(一) (じろきちこうし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 178.609 Zeichen · 362 Bildschirme
筒埋はすでにできている。八寸玉もそのわきにすわった。
立会役に代った藩士のひとりが、芒の葉を二本ちぎって籤にして二人に引かせた。短いほうが先揚、長い方が殿。――七が先に当った。
「いざ!」
と、五間先の闇から、慎吾の緊張した声がうながした。
七は、短い脇差をさし、素わらじに紺の脚絆だった。藍みじんの袖を革だすきに締めこんで、筒の前に膝を折った。
自分の生命をあずけるように、そろりと玉を仕込む。後ろへ退がって火縄を持った。
――口火落しの大事なことはいうまでもない。技といおうかこつといおうか、ぽんと筒へ火を落すとたんの呼吸ひとつで、満天にひらく名花もだいなしに崩れることがある。また黒玉といって、まったく殻をやぶらずに、そのまま、落ちてしまう例もある。黒玉を打ちあげたらば煙火師は土地にいられなかった。それほど絶大な恥辱としていた。
さて!
七は、呼吸をはかって、火を筒に落した。
そして、サッと身を退いた。――おどろくべき迅さで。
しゅッと、手もとの黄煙を突いて、細い火光がまっすぐに宙へ翔け上がった。
同時に、退いた膝形のまま、ひとみもそれを追って空に走っている。