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Japanische Klassiker mit Furigana

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じろきちこうし

治郎吉格子 名作短編集(一)

吉川 英治

Lesen Sie 治郎吉格子 名作短編集(一) (じろきちこうし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 178.609 Zeichen · 362 Bildschirme

Aozora Bunko

今市へ泊った晩に、相宿の者からひょいと聞き込んだので」

「存ぜぬために、お礼も申さず」

「いやいや、こッちに都合のわるい連れがいたので、わざと、お会いしなかったのじゃ。――だが、今聞けば、一足ちがいで、ここを立ったという事。はやく行かっしゃい、時遅れては」

「では、お信は、まだあの傷手の病み上がり、どうぞ」

「ああ、心配しなさるな。どうかけ違っても、わしが、ひきうける」

「安心しました、それでは」

「一角も、剣を把ると、名だたる腕利き。ぬかりはあるまいが、油断はせまいぞ」

「その儀は」

と、初めて、明るい一笑を投げて、丈八は、宙を翔るように、街道を急いで行った。

みだれる雲――疾風の叫び――行く方は宵闇ほど暗かった。時々、青白くひらめく稲妻が眸を射、耳には、おどろおどろ、遠い雷鳴がきこえてきた。

×   ×   ×

「あっ――傘が」

と、男女は、柄を持ちあった。

び、び、び、と傘の耳を鋭い風の戦慄と、雹みたいな雨つぶの音が、横に、なぐッて行く。

鹿沼の、博奕打、玉田屋の酉兵衛は、この一夏で、日光の出開帳から上げた寺銭の大部分を、今、連れてゆく、孫のようなお八重の身代金に、投げだしたといわれていた。