Japanische Klassiker mit Furigana
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じろきちこうし
治郎吉格子 名作短編集(一)
吉川 英治
Lesen Sie 治郎吉格子 名作短編集(一) (じろきちこうし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 178.609 Zeichen · 362 Bildschirme
「――それでも、獄門は獄門だ。馬鹿野郎め」
雲霧は、真ッ暗な牢内で、罵ったが、その声は、また、自分へも、返って来る気がした。
「つまり、大馬鹿五人男か。――あははは。これで死にゃ、人間も、世話アねえ」
自嘲の歯を剥いて、からからと、独りで肩をゆすぶっていると、牢鞘の外で、
「おい、雲霧」
と、誰か低く呼ぶ者がある。
暗闇の牛みたいに、のっそり、人影が動いた。雲霧は――ははあ、もう牢番の交代時刻か――卯平がやって来たな、と直感した。
「何を、思い出してるのだ。――もう明後日は本牢へ送られ、この月の内にゃ小塚ッ原で、胴と首の生き別れじゃないか」
「だからよ」
と、雲霧は、もう一度、唇で薄く笑った。
「おかしくなったのさ」
「おかしいか」
「…………」
黙然と、彼は、牢廂の蜘蛛を見ていた。月に架けた一すじの糸に、青い露の玉が、キラと、明滅している。――人生。そんなものが、雲霧にも考えられた。
ここは、深川の御船蔵。その中にある仮牢だ。仲間の鼬だの、小猿だのが、皆、ケチな兇状につまずいて、東海道筋から軍鶏籠で、江戸へ差立てになったと聞き、役人への反抗と、仲間の面当てに、