Japanische Klassiker mit Furigana
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じろきちこうし
治郎吉格子 名作短編集(一)
吉川 英治
Lesen Sie 治郎吉格子 名作短編集(一) (じろきちこうし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 178.609 Zeichen · 362 Bildschirme
「じゃあ、無理はない」と、女房は抱き取って、乳をふくませながら、
「かわいそうに、こんなに、むしゃぶりついて」と、無心な靨を指で突いた。
針屋は、子を預けると、
「ア、楽々した。――おや、美味え臭いがすると思ったら」
と、土間炉で、小鳥の串焼をしている亭主の肩からのぞいて、
「俺も、餌がほしい。一本、御馳走になろうか」と、手をのばした。
「それは、つぐみだ、美味くないぜ。こっちのは雉子だから食べてみな」
「雉子? 雉子はいけねえ」
「なぜ」
「焼け野の雉子というじゃねえか。子供を持っている俺にゃ、雉子の肉は、美味くねえや」
「なるほど。……そういえば、今、店に休んでいらっしゃる御武家の御子息が眼が悪いので、足助村か、中之御所に、眼医者の上手があるかって訊ねておいでなすったが、お前、知らないかい」
針屋は、小鳥の串を、横に咥えながら、
「それや、足助村の香積寺に泊ってる坊さんだろう。医者じゃねえ、禁厭をする人だぜ」
「禁厭も、いいかも知れない。知っているなら教えて上げてくれ」
「何処にいる? そのお侍ってえのは」
「おやッ? ……」と、亭主は、腰を上げて、
「たった今、そこにいたんだが。