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Japanische Klassiker mit Furigana

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じろきちこうし

治郎吉格子 名作短編集(一)

吉川 英治

Lesen Sie 治郎吉格子 名作短編集(一) (じろきちこうし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 178.609 Zeichen · 362 Bildschirme

Aozora Bunko

呼吸が、はッはッと、口の外で動悸を打つ。

「おおうーい」

皺がれた声のあらし。

のめる。転ぶ。

「おおーいっ。雲霧ッ」

はっと気づけば、足痕は切れている。頭も顔も、雪だらけにして、雪の中に黙然と立ちどまっている白衣の人間を、老人はきっと見出した。

「御用ッ」

投げた捕縄に狂いはなかった。それを手に取らないこと二十年、すでに齢も六十をこえた俳諧師月杖は、昔の吟味与力、高梨小藤次なのである。

白い人影は、ぴくっと身を屈めた。捕縄の端は、その手に掴まれていた、地蔵行者の心蓮――雲霧仁左衛門の手に。

ぴんと、二人をつないだ縄。

何と深い、この縄の宿縁だろう。二十余年を経た今日でも、それは地獄を生めば生める。――呼へばたちまち、夜叉、悪鬼、羅刹、あらゆる魔の相は、この一すじの上へ降りて来るだろう。

「つい、逃げたのは、お恥かしい。――まだ昔の根性が、どこかに残っていたものとみえますな、ははははは」

雲霧は、そういって、昂く笑いだした。

「――自分から、お願いすることは、あなたが二十年も先からやっていて下すった。何とお礼をいっていいか。――さあ、高梨小藤次様、縛って下さい」