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Japanische Klassiker mit Furigana

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じろきちこうし

治郎吉格子 名作短編集(一)

吉川 英治

Lesen Sie 治郎吉格子 名作短編集(一) (じろきちこうし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 178.609 Zeichen · 362 Bildschirme

Aozora Bunko

「いえ、まだちっとも、商売に馴れませんで」

「さ、荷を下ろして、そこへ掛けな。馴れねえ商売ってものは、気づかれのするもんだ」と仁吉は、治郎吉との話をけろりと、忘れッ放して――「元結もきれたから貰いてえし、ほかにも、ちょっと話があるんだが、このお客様のすむまで、しばらく待ってくんな」

「はい。ごゆっくり」

と、お喜乃は元結箱を下ろして、陽にあたって来た鬢の汗を、そっと小菊紙で抑えていた。

仁吉に、顔をまかせながら、治郎吉の眸は、眼の隅へ寄って、お喜乃の方へながれていた。――見ると、これはすばらしい、十九か、二十歳くらい、単に、きりょうが美いというばかりでなく、品がいい、髪の毛がいい、唇がいい、眼もとがいい。

それに背や、肉づきまでが、治郎吉が描いて持っている好みにぴったりと来ている。彼は、とても、お仙の比じゃないと思った。

――どこの娘じゃろう。剃刀の刃が、髯の根を、気もちよくとおってゆく音を聞きながら、そんなことを考えはじめた。

――この年ごろで、木綿帯は可哀そうだ。着物もそまつだし、安櫛をさして、なりにもふりにも関心わないでいるところは、問うまでもなく、貧乏人だ。