Japanische Klassiker mit Furigana
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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(九)不死の霊薬
野村 胡堂
Lesen Sie 銭形平次捕物控(九)不死の霊薬 (ぜにがたへいじとりものひかえ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 144.106 Zeichen · 292 Bildschirme
後れ毛を掻き上げるか弱い手、ホッと溜息を吐く様子までが、跫音を忍ばせたガラッ八には、手に取るごとく見えるのです。
娘はしばらく涙に暮れる様子でした。が、フト、後ろからガラッ八の近づくのに気が付くと、草履を脱いで、その上に何やら紙片を置き、簪を錘にして、
「南無――」
欄干へ攀じ登ったのです。
「危ないッ、待った」
後ろから飛付いたガラッ八、危うく欄干を越しそうにした娘の身体をもぎ離すと、それを抱き上げたまま、力余って後ろざまによろけます。
「あれーッ、放して下さい」
必死ともがく娘。
「とんでもねえ、放したらまた飛込むだろう。どんなわけがあるか知らねえが、死ぬのは不料簡――」
「いえいえ死ななきゃならないわけがある、お願いだから放して下さい」
華奢で骨細な娘ですが、必死の力を出すと、腕自慢のガラッ八にも容易には押え切れません。後ろから羽交締めに、欄干へ寄せないのが精一杯。
「死んで花実が咲くものか、――第一この寒空、死にようもあるのに、身投げは季節じゃねえ、――落着いて訳を話せ」
「お願いだから殺して下さい、どうせ生きてはいられない私」
身を揉むほどに、娘の身体がしっとり汗ばんで、薫蒸された脂粉の匂いが、揉み合うガラッ八をふんわりと押し包みます。