Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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やぎゅうつきかげしょう

柳生月影抄 名作短編集(二)

吉川 英治

Lisez 柳生月影抄 名作短編集(二) (やぎゅうつきかげしょう) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 173 309 caractères · 352 écrans

Aozora Bunko

「勝敗は」

と、やや急いて訊く。

「いかようとも、もはや、もり返す策だてはないかと存じまする」

五助の落着いたことばを聞くと、

「そうだろう」

常と変らなかった。

そして、静かに、

「皆の者、前へ」

と、呼び集めて、血を絞っているように開かない瞼を、家臣の上に向けた。

「よく戦ってくれた。……かような不具の主人を持って、晴々しき思いもさせず、今日までの忠勤、刑部、何と礼を云おうぞ」

「…………」

轟々と人畜の殺戮に空も鳴り大地も沸いている死の旋風の中で、ここの主従だけは、ひっそりと、嗚咽のうちの親と嬰児のようになっていた。

「――しかも、最後の日まで」

と、云って刑部もさすがに声をつまらせた。家臣たちは、かつて見たことのない主人の相貌を初めて見た、そして見る事の終りだと思った。

「……この眼が、見ゆるならば、そち達と共に、駈け下りて、手ずから一戦、武士らしい死に様を遂げたいとは思うが、この不自由。わしはわしで、死の途をとる。其方どもも、各※(二の字点、1-2-22)、目ざましゅう死のうと思う者は行け、わしに関わずに望む敵を目がけてゆけ。また、故郷へ去りたいと思う者、老いたる親でもある者は逃げたがよい。