Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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やぎゅうつきかげしょう

柳生月影抄 名作短編集(二)

吉川 英治

Lisez 柳生月影抄 名作短編集(二) (やぎゅうつきかげしょう) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 173 309 caractères · 352 écrans

Aozora Bunko

「心得ましてござります」

猿殿には、もう湯殿の杉戸を開けている。いちいち人手を待たないので、小姓たちはかえって天手古舞うのであった。具足を脱いで、ずしりと置くと、乾いた泥がこぼれ落ちる。

湯もまた早い。

どこを洗ったでもなく、たちまち真っ赤になって出て来られた。鎧下の肌着だけはお代えになったが、具足は、新しい物がそこへ取揃えてあるにかかわらず、風雨によごれた古い方を着込んで、

「小姓」

と、滴る襟の汗を拭いながら吩咐けた。

「出陣は、明早朝と――表方の者に触れるように、すぐ伝えておけ」

湯殿の次の揚屋に腰打ちかけたまま、さらに、金奉行を呼びにやられた。

「いくらある。城内の蓄えは」

金奉行は、即答して、

「銀子七百五十貫、金子八百余枚ほどござりまする」

「それを皆、蜂須賀彦右衛門に渡せ。――彦右衛門の手より、番頭、弓、鉄砲、槍の者、小荷駄、足軽どもへまで、知行に応じて、残らず分配せいと申せ。――秀吉の手許に、一分一厘も残しおくに及ばぬぞ」

そこへ、奥の侍女が来て、

「御母堂さまが、一刻の間も早う、御無事のお顔見たいと、待ちかねておいでなされまするが」

「おお今参る。