Classiques japonais avec furigana
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しんしゅうこうけつじょう
神州纐纈城
国枝 史郎
Lisez 神州纐纈城 (しんしゅうこうけつじょう) de 国枝 史郎 (くにえだしろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 188 242 caractères · 380 écrans
第十五回
一
こう云ったのは陶器師であった。
ここは富士の三合目であった。
火が竈で燃えていた。それが飴のように粘って見えた。
今日はお山は曇っていた。空気も変に湿っていた。で小鳥達も悄気返り、葉蔭に隠れて歌わなかった。
「お話にも何んにもなりゃあしない。餓巷に満つるというのは、応仁時代の京師だが、今の甲府は癩患者で、それこそ身動きも出来ないほどだ」
春とは云っても寒かった。竈の火口へ手を翳しながら、草賊の長毛利薪兵衛は、物臭さそうにこう云った。
「火柱が立つっていうのだな」陶器師は好奇的に訊いた。
「そうだ、毎晩立つそうだ」
「そいつが悪病の主なのだな」
「うん、そうらしいということだ」
「お前見たのか、火柱を?」
「幸か不幸か見なかった。……目ぼしい仕事はあるまいかと、甲府の城下へ行ったのだが、今からちょうど十日以前、仕事どころかそういう騒ぎだ。ほうほうの態で逃げ帰ったやつさ」
薪兵衛はここで苦笑した。
「莫迦な奴だ。意気地なしめ」陶器師は冷笑した。「そういう騒ぎだ、ドサクサ紛れに、信玄の首でも掻けばよかった」
「え、何んだって、信玄の首? 冗談じゃあねえ、何を云うんだ。