Classiques japonais avec furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(一)
吉川 英治
Lisez 宮本武蔵(一) (みやもとむさし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 231 525 caractères · 463 écrans
四
四
戦が熄んだといっても、まだ素槍や素刀は、この辺を中心に、附近の山野を残党狩りに駈けまわっているし、死屍は、随所に、横たわっていて、鬼哭啾々といってもよい新戦場である。年端もゆかない小娘が、しかも夜、ただひとり月の下で、無数の死骸の中にかくれ、いったい、何を働いているのか。
「……?」
怪しんでも怪しみ足りないように、武蔵と又八とは息をこらして、小娘の容子を、ややしばし見まもっていた。――が、試みに、やがて、
「こらっ!」
武蔵が、こう怒鳴ってみると、小娘のまろい眸は、あきらかにビクリとうごいて、逃げ走りそうな気ぶりを示した。
「逃げなくともいい。おいっ、訊くことがあるっ」
あわてていい足したが、遅かった。小娘はおそろしく素迅いのである。後も見ずに、彼方へ駈け出してゆく。帯の紐か袂に付けている鈴でもあろうか、躍ってゆく影につれて、弄るような美い音がして、二人の耳へ妙に残った。
「なんだろ?」
茫然と、武蔵の眼が、夜の狭霧を見ていると、
「物の怪じゃないか」
と、又八はふと身ぶるいした。
「まさか」
笑い消して、
「――あの丘と丘の間へ隠れた。近くに部落があると見える。