Classiques japonais avec furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(一)
吉川 英治
Lisez 宮本武蔵(一) (みやもとむさし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 231 525 caractères · 463 écrans
七
ふつうの鬼女の仮面は、およそ青隈で塗られた奇怪なものだが、この仮面の鬼女は、甚だ端麗であり、色白で上品な顔をしてどう眺めても美人なことである。
ただ、その美人が、おそろしい鬼女に見える点は、笑っている唇元だけにあった。三日月形に顔の左の方へ向ってキュッと鋭く彫りあげている唇の線が、どんな名匠の瞑想から生れたものか、何ともいえない凄味をふくんでいるのだった。明らかにこれはほんとに生きていた狂女の笑いを写し取ったものに違いない。――武蔵もそういう考えを下して見ていた品である。
「あっ、それはいけない」
この家の若い後家にとっても、それは大事な物とみえ、あわてて彼の手から奪り上げようとすると、城太郎は、頭の上に仮面をかざし、
「いいじゃないか、こんな物、いやだといっても、おいらは貰ッたアと!」
踊りながら逃げ廻って、何といっても返さない。
七
調子にのると子どもは止まりがない。武蔵が、後家の迷惑を察して、
「これっ、なぜそんなことを」
と叱っても、城太郎は浮かれ調子をやめないで、こんどは仮面をふところに入れ、
「いいね、おばさん。おいらにおくれね、いいだろ、おばさん」