Classiques japonais avec furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(一)
吉川 英治
Lisez 宮本武蔵(一) (みやもとむさし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 231 525 caractères · 463 écrans
自分は、剣を道とし、彼の上にまで超えねばならぬ」
と、そう思った。
青春、二十一、遅くはない。
彼の足には、力があった。ひとみには、若さと希望が、らんらんとしていた。また時折、笠のつばを上げ、果て知らぬ――また測り知れぬ人生のこれからの長途へ、生々した眼をやった。
すると――
姫路の城下を離れてすぐである。花田橋を渡りかけると、橋の袂から走って来た女が、
「あっ! ……あなたは」
と袂をつかんだ。
お通であった。
「や?」
と、驚く彼を、恨めしげに、
「武蔵さん、あなたは、この橋の名を、よもやお忘れではありますまいね。あなたの来ぬうちは、百日でも千日でもここに待っているといったお通のことはお忘れになっても――」
「じゃあ、そなたは、三年前からここに待っていたのか」
「待っていました。……本位田家の婆様に狙われて、一度は、殺されそうになりましたが、辛くも、命びろいをして、ちょうど、あなたと中山峠でお別れしてから二十日ほど後から今日まで――」
橋の袂に見える道中土産の竹細工屋の軒を指さして、
「あの家へ、事情を話し、奉公しながら、あなたの姿を待っておりました。きょうは、日数にしてちょうど九百七十日目、約束どおり、これから先は、一緒に伴れて行って下さるでしょうね」