Classiques japonais avec furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(一)
吉川 英治
Lisez 宮本武蔵(一) (みやもとむさし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 231 525 caractères · 463 écrans
(――おじさアん)
叫びそうにしたが、それを怺えて、そばの杉の樹へしがみつき、両手の中に顔を埋めた。
武蔵は振り向かなかった。しかし、城太郎の泣きじゃくりがいつまでも耳にこびりついていて、もう頼り人のない薄命な少年のおろおろした姿が背中に見える気がしてならない。
(よしなき者を連れて歩いて――)
と、彼は心に悔いを噛むのであった。
未熟な自分の身一つさえ持てあましているものを――孤剣を抱いて明日のことさえ知れない身であるものを。――思えば、修行中の兵法者に道づれは要らないものだった。
「おうーい。武蔵どの」
いつか杉林を通りぬけて、ひろい野へ出ていた。野というよりは、斜めに起伏を落している山裾である。彼を呼んだ男は、三笠山の山道のほうからその裾野へ出て来たらしく、
「何処へお出でか」
二度目のことばをかけながら駈けて来て、馴々しく肩をならべた。
いつぞや泊り先の観世の後家の家へやって来た三名の牢人者のうちで、山添団八と名乗ったあの男なのである。
――来たな。
武蔵はすぐ看破した。
だが、さあらぬ顔して、
「おう、先日は」
「いや過日は失礼を」
あわてて挨拶をし直したその礼儀ぶりが、いやに叮嚀である。