Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

みやもとむさし

宮本武蔵(一)

吉川 英治

Lisez 宮本武蔵(一) (みやもとむさし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 231 525 caractères · 463 écrans

Aozora Bunko

……連れて行って下さい。どんな苦しみも厭いません)

武蔵は胸が痛んでくる。

苦しまぎれに、あの純な気持を裏切って、隙を作って、自分は驀しぐらに走ってしまった。

どんなに――あの後では自分を恨んでいただろう。理解できない男性を、呪わしい存在として唇を噛みしめたことだろう。

「ゆるしてくれ」

花田橋の欄干に小柄で残してきたことばが、吾れ知らず、今の武蔵の唇からも洩れていた。そして、涙のすじが眼じりから白くながれていた。

「ここじゃあない」

ふいに、高い崖の上で人声がした。三つ四つ松明が、木の間を掻きわけて立ち去るのが見えた。

武蔵は、自分の涙に気がつくと忌々しげに、

「女などがなんだ!」

手の甲で眼をこすった。

幻想の花園を蹴散らすように、ガバと跳び起きて、ふたたび小柳生城の黒い屋形を見上げ、

「卑怯といったな、恥を知れといったな。武蔵はまだ、降伏したとはいっていないぞ、退いたのは、逃げたのではない。兵法だ」

空濠の底を、彼は歩きだした。何処まで歩いても空濠の中である。

「一太刀でも打ち込まずにおこうか。四高弟などは相手でない。柳生石舟斎その者へ見参、見ろ、今に――合戦はこれからする!」