Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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やぎゅうつきかげしょう

柳生月影抄 名作短編集(二)

吉川 英治

Lisez 柳生月影抄 名作短編集(二) (やぎゅうつきかげしょう) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 173 309 caractères · 352 écrans

Aozora Bunko

「なるほど、これは結構。久しぶりで、惣菜らしい物を食うた」

むろん、何気なく出たのだが、久太夫のことばに、一同は、はっとしたようだった。死を待つ国法の罪人に、過分とも何とも、これ以上は、好意の表現がないほど、優遇を尽してくれている細川家に対し、また接伴役の家士に対して、今のことばが、ちょっとでも、不平とひびいては申し訳ないという気持が、期せずして、誰の眉にも、ぴりっとうごいたのであった。

だが、伝右衛門は、そんな神経は持ち合せてもいないように、むしろ、そういって貰った事が欣しい顔つきで、

「ほう。ひどくお気に召されたの。てまえも、非番の日は、ちと、晩酌をやりまするで、上戸の舌は、わかるとみえる。――だが、田作の唐辛子煮など、余り失礼物ゆえ、どうかと思うて――」

すると、内蔵助が、

「伝右殿」

炬燵ぶとんを退けて、静かに、真四角な膝を前へすすめて来たので、伝右衛門は、ここへ来ると、つい寛いでしまう自分を、急に、引き緊めながら、

「はっ、何ぞ?」

と、べつな返辞をした。

内蔵助は、いい難そうに、

「まことに、吾儘らしい申し出でござるが――」

「はい」

「われら、永年の浪人暮し、粗衣粗食に馴れて参ったせいか、御当家より朝夕頂戴いたしおります二汁五菜のお料理は、結構すぎて、ちと重うございます。